キプロスの王ピグマリオンは、大理石で自らの理想とする女性の像を彫り上げた。
そして彼は、その像に恋をしてしまう。
自分の理想は彫像である。それは悩みであり懊悩であった。
とうとう彼は美の女神アフロディテに、像のような理想の乙女と出会えるよう祈りを捧げた。
女神は彼の願いを聞き届け、彫像に命を与えたのである。
命を与えられた彫像の女の名前はガラテアといった。

 


■ NOVELS ■
Fenrir-フェンリル- / 鹿神藍
Liberator-解放者- / 鹿神藍

コンクリート / 早稲実
/ 早稲実

アイザックをもう一冊…… / 友鶴畝傍

 
 

一人の研究者が術を手に入れた。
乱雑に配置された遺伝子情報を書き直す術だ。
世界には異常な姿を持つものが溢れている。
掌から零れ落ちる水のように、
正しき器を持つことを許されなかったものの姿。
ただ研究者が求めた術は副産物に過ぎない。
研究者は恋をしていた。
遺伝子工学と術であるナノマシンの可能性に。
向こう側にはただ、研究者が望む理想があった。
研究者は理想なる完全な人を生み出すこと願った。
だがしかし、理想は理想にしか過ぎない。
研究者はその理想をガラテアと呼んだ。